予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その15(審査の進捗状況を知りたい)

予防接種健康被害救済制度について、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。

Q 予防接種健康被害救済制度の申請をした後、進捗状況を問い合わせることはできますか。

A できます。問合せ先は市町村になります。

手続の段階は、
  • 市町村から国への進達前
  • 市町村から国への進達後
に分かれますが、いずれであっても申請先の市町村に進捗状況の問合せをすることができます。

⑴市町村から国への進達前

これは、市町村が資料収集をしている途中か、調査委員会の審議待ち、の段階と考えられます。

予防接種健康被害救済制度の処分庁は市町村ですから、行政手続法に基づき、市町村に進捗状況の問合せをすることができます。
市町村側の回答は努力義務なので、市町村がどの程度回答してくれるかは市町村ごとに異なると思われますが、
  • 調査の進捗状況(例えば、どの医療機関から資料を取り寄せ中で、どの医療機関からは取り寄せ済みか)
  • 調査の完了見込時期
  • 調査委員会の審議予定時期
  • 国への進達見込時期
といったことを尋ねてみるのがよいでしょう。
【参考:市町村に問合せできることの根拠規定】
行政手続法9条(情報の提供)
  1. 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
  2. 行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。

⑵市町村から国への進達後

これは、疾病・障害認定審査会が追加の調査をしているか、審査会の審議待ち、の段階と考えられます。

厚生労働省が各都道府県に配布した「予防接種健康被害救済業務 Q&A集」には、市町村を通じて審査状況の問合せが可能、との記述があります。

Q7-5
申請者から進達した症例の審査状況の問い合わせがあった場合はどのように対応したら良いか?

A7-5
市町村から都道府県庁を経由して国にお問い合わせいただいた場合は、現在の審査状況についてご案内します。
また、審査終了後に厚生労働大臣名の審査結果の通知を送付します。

出典:予防接種健康被害救済業務 Q&A集

・出典:予防接種健康被害救済業務 Q&A集(リンク先PDFの33頁以下がQ&A部分)
http://www.nagaoka-med.or.jp/nichii_mail_bunsho/nichii_mail_bunsho_2024/2024ken2_222.pdf
(厚生労働省Webサイト上ではQ&A部分が含まれる文書が見つからなかったので、Q&A部分を含む長岡市医師会のサイト掲載文書のリンクを掲示)

審査状況を市町村に聞くときに、以下のような点を国に問い合わせてもらうよう依頼してみるのがよいでしょう。
  • 審査の進捗状況(例えば、追加調査事項の有無)
  • 追加調査がある場合の進捗状況、完了見込時期疾病・障害認定審査会の審議予定時期

救済申請の審査の長期化がいろいろなところで指摘されており、制度的な対策も求められていると思いますが、現場レベルでまず着手できるのが、進捗状況の問合せ・回答の定着でしょう。
進捗状況やスケジュールの可視化が主目的ですので、問合せの頻度は1ヶ月~2ヶ月に1回程度でよいと思います。

本記事が好転のきっかけになりましたら幸いです。

弁護士 圷 悠樹