予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その21
-障害年金3級「労働の著しい制限」と2級「労働の高度の制限」とは-

予防接種健康被害救済制度について、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。

Q 予防接種健康被害救済制度の障害年金3級の「労働の著しい制限」と2級の「労働の高度の制限」について教えてください。
障害の診断書に、どのようなことを書いてもらえばよいのでしょうか。


A 予防接種健康被害救済制度の障害年金・障害児養育年金は、認定基準・認定要領にあたるものがないので、難しい問題があります。
隣接する他制度の基準を参考にするしかなく、それをもとにかなり簡潔に図式化すれば

  • 3級の「労働の著しい制限」:労働内容の制限
  • 2級の「労働の高度の制限」:労働内容の制限and労働時間の制限

が目安になると考えられます。
障害の診断書を医師の先生に依頼するときなどには、参考にしてください。
ただ、認定基準・認定要領がないということは、実際にそのような判断がなされるかどうかはやってみなければわからない、と言わざるを得ませんので、ご了解ください。

順を追って説明します。

国民年金・厚生年金保険の障害年金では、国民年金法施行令・厚生年金保険法施行令で定められた障害等級に加えて、具体的な認定基準・認定要領が存在します。
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(日本年金機構Webサイト)

一方で、予防接種健康被害救済制度の障害年金・障害児養育年金については、予防接種法施行令で定められた障害等級のみで、認定基準・認定要領にあたるものがありません。
これは、現行の予防接種健康被害救済制度の大きな問題点の一つです。
障害児養育年金の場合は、障害等級の内容が特別児童扶養手当のそれと共通性が大きいので、特別児童扶養手当の認定を先に受ける、といった対処が考えられます。
しかし、障害年金の場合は、障害等級が他制度と異なるので、認定基準・認定要領がないことによる問題が強く感じられます。

具体例でいうと、次のようなことです。

国民年金・厚生年金保険の障害年金2級8号「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」は、認定基準・認定要領によれば、以下の場合に該当します。

・一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
不良肢位で強直しているもの
関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
筋力が著減又は消失しているもの

一方で、予防接種健康被害救済制度の障害年金2級5号「一上肢の用を全く廃したもの」と3級4号「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」は、認定基準・認定要領にあたるものがないので、どのような場合に該当するのかが不明です。
例えば、一上肢の3大関節すべてが筋力著減または消失している場合、国民年金・厚生年金保険の障害年金では2級に該当すると考えられますが、予防接種健康被害救済制度の障害年金では、2級でしょうか、3級でしょうか、あるいは非該当になるのでしょうか?
国民年金・厚生年金保険の認定基準・認定要領では、関節の筋力著減または消失=関節が全く用を廃した、となるので、上肢の3大関節すべてがこれにあたれば、「一上肢の用を全く廃したもの」にあたることになりそうです。
ですが、予防接種健康被害救済制度では、関節の筋力著減または消失=関節が全く用を廃した、という基準があるわけではありません。
そのため、どのような判断がなされるか、やってみなければ分からない、といわざるを得ないのです。

このように、認定基準がないと困る障害等級の最たるものが、「労働の著しい制限」(3級)と「労働の高度の制限」(2級)です。

・予防接種健康被害救済制度 障害年金3級7号
前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

・同 2級8号
前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度のもの

・同 1級4号(参考)
前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、労働することを不能ならしめ、かつ、常時の介護を必要とする程度のもの

このうち1級は労働不能+常時介護の状態ということで、他と性質が違っていますね。

ここでの問題は2級と3級の違い、また3級と非該当の違いです。
予防接種健康被害救済制度の障害等級について、独自の認定基準・認定要領がない以上、他の制度の類似の障害等級の基準を参照するしかないのが現状です。

労働の著しい制限(3級)については、国民年金・厚生年金保険の障害厚生年金3級にも同じ概念があります(厚生年金保険法施行令別表第一・12号)。
これについては、認定基準の「一般状態区分表」では、以下のように例示されています。
 肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできる場合。例えば、軽い家事、事務など。
 (国民年金・厚生年金保険の障害年金における「一般状態区分表」のイ)
つまり、労働内容の制限ですね。
そうすると、労働内容の制限ではなく、労働時間の制限の場合にはどうか、という問題が考えられますが、これは後で触れます。

労働の高度の制限(2級)については、国民年金・厚生年金保険法には対応する概念がないものの、労働者災害補償保険法上の遺族補償年金の支給要件にあります。
関連行政通知では、以下のように説明されています。

労働の高度の制限とは、完全な労働不能で長期間にわたる高度の安静と常時の監視又は介護を要するものよりも軽いが、労働の著しい制限よりは重く、長期間にわたり中等度の安静を要することをいう。
(昭和41年01月31日基発第73号都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

つまり、労働内容の制限and労働時間の制限、と考えられます。
労働時間の制限の程度としては、「長期間にわたり中等度の安静を要する」とされています。
この目安はどの程度でしょうか?
私見では、「週のうち50%以上は自宅にて休息している。」(ME/CFS診断基準のPS値6相当)という程度であれば、該当する可能性が高いといえるのではないかと考えられます。
これより一つ上のPS値7相当だと労働不能と評価されており、PS値6相当が限定的に就労可能なぎりぎりの段階ということになるからです。

では、「軽労働は可能であるが、 週のうち数日は自宅にて休息が必要である。」(PS値5相当)の場合はどうでしょうか?
ここでの結論としては、「実際にやってみないとわからない」、ということになります。
労働内容の制限もあるので、少なくとも3級にはあたるはずだと考えられますが。
これも、認定基準・認定容量がないことによる弊害といえます。

ここまでをかなり簡潔に図式化すると、以下のようになります。

  • 3級:労働内容の制限
  • 2級:労働内容の制限and労働時間の制限
  • 1級:労働不能and常時介護

障害診断書の作成を医師に依頼する際は、診断書の様式と実際の認定判断の焦点(労働の制限)にずれがあることを意識して、

  • 労働内容の制限の有無、程度
  • 労働時間の制限の有無、程度
について、具体的な記載をしてもらうのがよいと考えられます。

それでは、後に回した宿題として、3級「労働の著しい制限」には、労働時間の制限も該当するでしょうか?
つまり、労働内容の制限or労働時間の制限、と考えられるかどうか、です。

例えば、以下のような場合です。

  • 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。(PS値3相当)
  • 全身倦怠感の為、週に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。(PS値4相当)

これについても、今のところ、「実際にやってみないとわからない」、といえるにとどまります。

繰り返しになりますが、こうした不透明さが多く残るのは、予防接種健康被害救済制度の障害について認定基準・認定要領がないことによる弊害といえます。

現状、予防接種健康被害救済制度の障害年金・障害児養育年金のみ、他類型と比べて認定率が顕著に低くなっています。
少なくとも障害年金については、以下のような要因が考えられます。

  • 国民年金・厚生年金保険の障害年金の等級とかなり違う(障害児養育年金は特別児童扶養手当との共通性が大きい)
  • 予防接種健康被害救済制度の障害診断書の様式が、障害年金の判断の中心となる労働能力の制限にあまり焦点が合っていない(様式は障害児養育年金と障害年金の兼用で、かつどちらかというと障害児養育年金に寄った内容。日常生活の制限の情報欄が多く、労働の制限の情報欄が少ない)

もっとも、障害児養育年金については、その認定率の低調さの説明は現状では困難といわざるを得ません。
行政側で特別児童扶養手当の認定を先行させるよう案内し、次に障害児養育年金の請求を、と対応していけば、基本的には前者の障害等級を踏襲することになりそうに思えるのですが。

引き続き情報収集につとめていくしかありません。

本記事が好転のきっかけになりましたら幸いです。

弁護士 圷 悠樹