予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その10(令和6年度からの新型コロナワクチンの健康被害救済の変更点)

予防接種健康被害救済制度についての私家版Q&Aでは、公表資料から、主に制度の現状の整理をしました。
本記事では、弁護士として、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。

Q 令和6年度から、新型コロナワクチンの扱いが変わると聞きました。健康被害の救済についても変更がありますか。

A はい。変更があります。救済制度の給付の種類や給付額が変わるほか、変更後分は請求の期限がありますので、注意が必要です。

なお、あくまで接種時点が基準ですので、令和5年度までの接種分(特例臨時接種分)は、令和6年度になっても健康被害救済制度上の扱いは変わりません。
扱いが変わるのは、令和6年度からの接種分(B類定期接種分)です。
新型コロナワクチンの接種は、令和5年度までは「特例臨時接種」でした。

令和6年度からは、主に高齢者向けの「B類定期接種」となります。
個人の重症化予防を目的とする、とされています。
今のところ、令和6年10月1日以降に接種が開始されるようです。
なお、B類定期接種の対象外の方が自費で接種を受ける場合は、「任意接種」となります。

予防接種健康被害救済制度では、「特例臨時接種」も「B類定期接種」も対象になりますが、給付の種類や給付額が異なります。
具体的な変更点は、以下のWebサイトの、「A類疾病の定期接種・臨時接種」欄と「B類疾病の定期接種」欄を見比べてみてください。

・予防接種健康被害救済制度について(厚生労働省Webサイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkouhigaikyuusai.html

令和5年度までにあたるのが、「A類疾病の定期接種・臨時接種」欄です。「特例臨時接種」もこちらによります。
令和6年度からにあたるのが、「B類疾病の定期接種」欄です。

B類定期接種になることによる主な変更点として、以下の事項があります。
  • 給付水準は全体的にB類定期接種の方が低くなる
  • 障害児養育年金の類型はなく、障害年金は2等級構成になる(A類定期接種・臨時接種の障害年金は3等級構成)
  • 死亡一時金はなく、遺族年金と遺族一時金がある
  • 【重要】B類定期接種分は請求期限がある(以下の※のとおり)
    ※B類疾病の請求期限
    医療費:当該医療費の支給の対象となる費用の支払が行われた時から5年。
    医療手当:医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年。
    遺族年金、遺族一時金、葬祭料:死亡の時から5年。ただし、医療費、医療手当又は障害年金の支給の決定があった場合には2年。

請求期限については、令和5年度までの接種分にはなかった請求期限が令和6年度からの接種分にはある、ということになるので、注意が必要です。
法令上、A類定期接種・臨時接種分には請求期限の定めがなく、B類定期接種分には請求期限の定めがある、というパッチワーク的な状況になっています。
なぜこのような違いがあるのかは、私自身も今のところよくわかっていません。

なお、任意接種の場合は、予防接種健康被害救済制度ではなく、医薬品副作用被害救済制度の対象となります。
給付の種類や給付額は、予防接種健康被害救済制度のB類定期接種のものと同等です。
請求窓口が異なり、市町村ではなく、独立行政法人医薬品医療機器総合機構になります。

・健康被害救済業務 給付の種類と給付額(独立行政法人医薬品医療機器総合機構Webサイト)
https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0007.html

任意接種の場合、医薬品副作用被害救済制度にも原則として請求期限があります。
B類定期接種の場合とほぼ同一ですが、「ただし、正当な理由があるときはこの限りではありません。」という例外の付記があります。
具体的な期間は以下のリンクをご確認ください。

・請求期限(独立行政法人医薬品医療機器総合機構Webサイト)
https://www.pmda.go.jp/relief-services/infections/0008.html

弁護士 圷 悠樹