予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その13(医療費・医療手当の認定期間を限定された)

予防接種健康被害救済制度について、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。

Q 医療費・医療手当の申請をしたところ、認定はされましたが、認定期間を申請よりも短くされました。

A 当初の認定期間の後も治療が続いている場合、資料を追加して再申請をすることには妨げはなく、可能です。
その適否、認定されるかどうかは個別の事情によります。

厚生労働省が各都道府県に配布した「予防接種健康被害救済業務 Q&A集」によると、医療費・医療手当の認定期間について、要旨以下の記載があります。
  • 医療費・医療手当の認定期間は、「治癒まで」とされる場合と、「○○日まで」と区切られる場合がある。
  • 明示的に「治療中」として請求された場合や、資料の記載から今後も治療が続く可能性があると判断された場合には、「治癒まで」と認定される可能性がある。
  • 申請期間よりも短い認定期間となった場合(治療中として申請して特定の期間に区切られた場合等)、認定期間の後も治療や薬の処方が継続している場合には追加資料を提出して再申請が可能。
Q8-3
認定期間が「治癒まで」として認定されるのはどのような場合か?
A8-3
予防接種と健康被害の因果関係が認められた症例において、
  • 治療中として申請がなされた症例や
  • 進達資料から明示的に終診となったことが明らかでない症例、
  • 診療録等から認定後も医療機関への受診や薬の処方をされる可能性がある症例
について、期間を治癒までとして認定される場合があります。
Q8-4
認定期間が「〇〇日まで」と区切られているが、その後も治療が続いている。
医療費の申請を再度行うことは可能か?
A8-4
認定期間後に認定疾病が再発等した場合については、当該期間について新たに申請を行うことができます。
また、当初申請した期間よりも短い期間(治療中として申請して特定の期間に区切られた場合等)で認定がなされ、当該疾病の治療や薬の処方が継続している場合については継続分の資料を添付した上で再申請が可能です。
予防接種健康被害救済業務 Q&A集

・出典:予防接種健康被害救済業務 Q&A集(リンク先PDFの33頁以下がQ&A部分)
http://www.nagaoka-med.or.jp/nichii_mail_bunsho/nichii_mail_bunsho_2024/2024ken2_222.pdf
(厚生労働省Webサイト上ではQ&A部分が含まれる文書が見つからなかったので、Q&A部分を含む長岡市医師会のサイト掲載文書のリンクを掲示)

このうち特に気になったのが、「治療中として申請して特定の期間に区切られた場合」の再申請が可能、とある点です。
これをQ&Aに載せた意図を私なりに理解すると、「現時点では「治癒まで」という判断はできないので、認定期間を区切ります。その後の治療については経過を見て判断したいので再申請してください。」という判断があり得る、ということでしょう。

これについては、再申請ができることを理由に、安易に認定期間を区切る判断がなされることにつながらないか、という懸念があります。
認定理由の説明が不十分だと、申請した健康被害者に伝わらず、「認定期間を超えた治療は認めない、と判断された」と受け止められてしまうおそれもあります。
また、再申請の負担にも考慮が必要です。

ただ厄介なのは、疾病・障害認定審査会が誠実に審査をしていたとしても、認定期間を「治癒まで」と判断しづらい場合があることも理解はできる、ということです。
特に、健康被害が重く、障害が残る可能性があるケースで想定される事態です。

障害が残るとは、完全には治癒しない(=症状固定)ということです。
症状固定の判断には医師の診断が必要で、被害者を診察していない疾病・障害認定審査会が事前に決められるようなものではありません。
「治癒するか症状固定になるかがまだわからないため、治癒まで、という認定期間にはしづらい。」という場面があり得ること自体は、理解できるのです。

この場合に大事なのは、認定期間を区切る意味を健康被害者に正しく伝えることです。
「これ以上の期間の治療を認めない」という意味ではなく、「今回の認定期間の後の期間については再申請が可能である」ということを明示することです。
あわせて、再申請の負担をできるだけ軽くすること、再申請の場合に何を省略できるかを健康被害者に説明すること、も重要でしょう。

このタイプのケースで実際にどのような取扱がなされているのかは、私もまだ把握できておらず、引き続き情報収集に努めたいと思います。

なお、上記のようなケースとは異なり、本来的な一部不支給決定として認定期間が限定されるケースもあり得ます。
例えば「3ヶ月間で治療終了し、3ヶ月分の医療費・医療手当を申請したところ、認定期間を2ヶ月分に限定された」というようなケースです。

上記Q&Aの趣旨からすれば、この場合も再申請には妨げはなく、可能と考えられますが、少なくとも追加資料がない場合には見通しはよくないでしょう。
その場合には、再申請より、審査請求の方が趣旨に合っていると考えられます(審査請求ができる期間の制限には注意)。
なお取消訴訟も選択肢となりますが、係争範囲が1ヶ月分の医療費・医療手当とすると、費用との見合いで使いづらいと思われます。

一方、1回目の申請期間(3ヶ月間)より後にも治療を受けたような場合には、上記Q&Aの趣旨からも、まず資料を追加して再申請をしてみる意義があると思われます。

本記事が好転のきっかけになりましたら幸いです。

弁護士 圷 悠樹