予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その19(再申請に適するのはどのような場合か?)
予防接種健康被害救済制度について、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。
Q 救済制度の申請をしましたが、不支給決定を受けました。
審査請求をすべきか、再申請をすべきか、どのように判断すればよいでしょうか。
A 本来は、ケースごとに、審査請求と再申請のどちらが適するかを判断すべきと考えます。
ただ、実際には、「審査請求期間(3ヶ月)の間に判断材料がそろわないので、期間徒過前に審査請求をせざるを得ない」となってしまうケースが相当数あると思われます。
予防接種健康被害救済制度では、不支給決定に対して、再申請をすることもできると考えられます(参照:予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その12 不支給決定後の再申請)。
つまり、審査請求と、再申請の選択肢があることになります(なお第三の選択肢として、審査請求と再申請を並行して行う、という途もあります)。
再申請が適する典型的な例を1つあげますと
障害年金の申請に対して「まだ症状固定に至っていない」との理由で否認されたので、現在では症状固定となっていることの資料を補充して再申請するような場合
です。
- 疾病・障害認定審査会が再度審査するのでも認定にたどり着けそうか(⇒再申請に適しやすい)、疾病・障害認定審査会以外に判断してもらうべきか(⇒審査請求に適しやすい)
- 否認理由や疾病・障害認定審査会の議事録に認定への手がかりが出ているかどうか
- 否認の決定受領後、速やかに厚生労働省に疾病・障害認定審査会の議事録の開示請求をする
- 開示請求の標準処理期間とされる1ヶ月で開示決定がなされ、開示された議事録を速やかに受領して検討する
- 議事録の内容から、認定への手がかり、疾病・障害認定審査会の再度の審査で認定される可能性が明確になれば、再申請が選択肢となる という手順が考えられます。
現実には、残念ながら、厚労省の開示決定までに2ヶ月かかることが多いです(私の経験の範囲では、1ヶ月で開示決定がなされるケースは少数派です)。
また、開示決定から、実際に開示文書を受領するまでにも、数日から1週間程度かかります。
そうなると、審査請求の期限である3ヶ月以内には、現実的に方針判断が間に合いません。
そのため、期限内に見切り発車的に審査請求をするかどうか決断せざるを得ない、という状況になります。
審査請求と並行して再申請をすることはできますが、通常、審査請求をしたのであれば、そちらに一本化する判断をされる方が多いのではないかと思います。
再申請は、審査請求が不奏功であったときに、改めてすることもできるからです。
行政側(主に厚生労働省)が、審査請求期間の3ヶ月以内に、再申請を選択するかどうか判断するのに必要な情報を申請者が入手することを難しくしてしまっていること
といえます。ここからは制度に対する改善提言の話です。
厚生労働省から市町村に認定結果を通知する際に、審議経過がわかる程度に具体的な理由と、できれば疾病・障害認定審査会の議事録の写しを沿えて、通知してはいかがでしょうか。
市町村は、支給/不支給の決定とともに、それを申請者に伝えます。
このようにすれば、申請者は、再申請によって認定にたどり着くことができそうかどうか、早期に判断することができます。
全体としては、
Honesty is the best policy.(正直が最良の方策)
といえるのではないでしょうか。
本記事が好転のきっかけになりましたら幸いです。
弁護士 圷 悠樹