予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その3(制度の対象外の場合、代替制度はあるか)
予防接種健康被害救済制度についての私家版Q&Aでは、公表資料から、主に制度の現状の整理をしました。
本記事では、弁護士として、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。
Q 予防接種健康被害救済制度の対象外の場合、他に健康被害の救済制度はありませんか
A 対象外となる事情によっては、「医薬品副作用被害救済制度」を利用できる可能性があります。
ただし、新型コロナワクチンの場合、令和6年3月31日までの期間に全額公費・自己負担なしで接種している場合は、残念ながら医薬品副作用被害救済制度の対象外である可能性が高いと考えられます。
一方、令和6年4月1日以降に、自費で新型コロナワクチンの「任意接種」を受ける場合は、この制度の対象になります(そのかわり、予防接種健康被害救済制度の対象にはなりません)。
医薬品副作用被害救済制度についての説明は、以下をご参照ください。
ただし、法律上、予防接種法の規定による予防接種を受けたことによる健康被害は、この医薬品副作用被害救済制度の対象にならないとされています。
第16条 副作用救済給付は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者に対して行うものとし、副作用救済給付を受けようとする者の請求に基づき、機構が支給を決定する。
一~五 略2 副作用救済給付は、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合は、行わない。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構法
一 その者の許可医薬品等の副作用による疾病、障害又は死亡が予防接種法の規定による予防接種を受けたことによるものである場合
二~三 略
逆にいうと、予防接種法の規定に基づかないワクチンの接種(いわゆる任意接種)による健康被害は、予防接種健康被害救済制度の対象にならないかわりに、この医薬品副作用被害救済制度の対象になります。
新型コロナワクチンの場合でいうと、令和6年4月1日以降、自費の任意接種で接種を受ける場合は、予防接種健康被害救済制度ではなく医薬品副作用被害救済制度の対象になります。
予防接種健康被害救済制度の対象外となってしまう場面として、例えば
- 死亡一時金の請求について、実親や実子でも生計同一要件をみたさず受給資格がないとされた場合
- 障害年金・障害児養育年金の請求について「政令に定める障害の状態に該当しない」として否認された場合
などが考えられますが、予防接種法の規定に基づく予防接種に起因する場合は、医薬品副作用被害救済制度の対象外とされてしまいます。
こうした場合、他にできることはないのか、ということですが、国家賠償請求訴訟・憲法訴訟(憲法29条3項に基づく損失補償請求)や制度改正の議論も含めた、非常に高度な検討が必要と思われます。
現状、私も、司法界の検討状況、世論の動向などを見て考え方を整理したい、という段階です。
弁護士 圷悠樹