予防接種健康被害救済制度Q&Aの追補その16(医療費・医療手当の対象になる範囲-介護保険を利用した場合-)

予防接種健康被害救済制度について、法的観点からのQ&Aを追加していきます。
特別の断りがない限り、新型コロナワクチンの予防接種とその健康被害を想定しています。

Q 医療費・医療手当の請求をするときに、介護保険を利用したサービスの自己負担分は対象になりますか。

A すべてではありませんが、医療的な性格もある介護サービスで、対象になるものがあります。

厚生労働省が各都道府県に配布した「予防接種健康被害救済業務 Q&A集」には、大要、
  • 医療機関でのデイケア:対象になる(医療費について)
  • 介護老人福祉施設でのショートステイ:対象にならない(医療費について)
  • 介護医療院への入所:対象になる(医療手当の日数計上について)
との記述があります(詳細は後掲のQ&A該当箇所を参照)。

デイサービスは、ショートステイと同様であろうと考えられます。

医療と介護が近接する施設としては、他に介護老人保健施設(老健)がありますが、老健のケースについてはQ&Aに言及がありません。
一般論としては、老健も医療提供施設に含まれますので、医療費の対象となる医療(※後掲)がなされ、医師の受診証明書の発行が可能であれば、対象になり得るのではないかと考えられます。

Q1-8
介護保険を利用してデイケアを病院などの医療機関で受けている場合、利用者が自己負担する費用を、医療費として請求することは可能か?
A1-8
医療機関で受けているデイケアについては医療に関する給付に該当するため、その自己負担した費用は医療費として請求可能です。
Q1-9
介護老人福祉施設で介護保険を利用したショートステイを受けている場合、利用者が自己負担する費用を医療費として請求することは可能か?
A1-9
ショートステイに要した費用は通常医療に関する給付に該当しないため、医療費として請求することはできません。
Q2-5
介護医療院への入所については、病院における入院と同様の取扱いとして受診証明書の医療を受けた日数に計上すべきか、それとも入院外として取扱うべきか?
A2-5
介護医療院は医療法における「医療提供施設」に該当するため、介護医療院に2日以上滞在し医療を受けている場合は、「入院日数」として計上してください。
予防接種健康被害救済業務 Q&A集

・出典:予防接種健康被害救済業務 Q&A集(リンク先PDFの33頁以下がQ&A部分)
http://www.nagaoka-med.or.jp/nichii_mail_bunsho/nichii_mail_bunsho_2024/2024ken2_222.pdf
(厚生労働省Webサイト上ではQ&A部分が含まれる文書が見つからなかったので、Q&A部分を含む長岡市医師会のサイト掲載文書のリンクを掲示)

【参考:医療提供施設の範囲】
医療法第1条の2 第2項
…病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)…

【参考:医療費の対象となる医療の範囲】
予防接種法施行令第10条第1項
法第16条第1項第1号(※医療費・医療手当)の規定による医療費の額は、次に掲げる医療に要した費用の額を限度とする。ただし、…(略)
  1. 診察
  2. 薬剤又は治療材料の支給
  3. 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
  4. 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
  5. 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
  6. 移送
【参考:各種介護施設で想定されるサービスの範囲、医療の有無】
介護保険法第8条第27項~第29項
27 この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。
28 この法律において「介護老人保健施設」とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者(その治療の必要の程度につき厚生労働省令で定めるものに限る。以下この項において単に「要介護者」という。)に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第九十四条第一項の都道府県知事の許可を受けたものをいい、「介護保健施設サービス」とは、介護老人保健施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう。
29 この法律において「介護医療院」とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者(その治療の必要の程度につき厚生労働省令で定めるものに限る。以下この項において単に「要介護者」という。)に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第百七条第一項の都道府県知事の許可を受けたものをいい、「介護医療院サービス」とは、介護医療院に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう。

本記事が好転のきっかけになりましたら幸いです。

弁護士 圷 悠樹